| 第14話 瀬戸内編 四国 香川県東かがわ市〜兵庫県南あわじ市 |
| 播磨灘の定置網漁体験、土産のワタリガニとマサバに舌鼓。 |
岡山から瀬戸大橋を渡って香川県へ。高松市街では春日町で「讃岐うどん」を食い、左手に見え隠れする瀬戸内海に漁港の匂いを探しながら国道11号を走って着いた先がさぬき市津田町である。津田港は漁港というよりも防波堤で、家族連れがのんびりと釣りをしていた。今日は釣れないと言っていたが、釣れるときはサビキ仕掛けで刺し身サイズのマアジが入れ食いになるというから、さすが瀬戸内海だ。 やがて海岸線が東かがわ市横内町に入ると、強烈な漁師町の匂いが漂ってきた。匂いの源、三本松漁港は小さな漁港かと思いきや、湾は深く陸地に入り込んでいて、漁船がすき間なく舫ってある。「三本松漁業協同組合」の看板を見上げるその足下には、アカエイの尾が毒針をつけたまま捨てられているじゃないか。おおらかというか、これで怪我をするのは素人くらいのものだということなのだろう。 ここで嬉しいハプニングが! 漁協職員と話しをしていたら、これから定置網を揚げに行くというのだ。ダメもとで「乗りたい」と言うと、「いいよ」だって!総勢10人ほどの男衆に混じって母船に乗り込み、小さな台船を引っぱって港を滑り出す。その台船に男が1人乗っていて、おもしろそうだからあっちに乗りたいと言うと、あっちは地獄だから止めとけと笑われる。 やがて漁港を出ると船は全速力で走り出し、後ろを振り向けば確かに台船に乗らなくてよかったよ。沖合2kmほどとはいえ、瀬戸内海の真っ直中だ。漁場に着くと台船の男が、乗ってもいいよ、と何て優しい。 台船とは定置網の片方の端をこれに固定して、魚網が沈まないように、いわば浮きのような役目を果たす船のこと。その台船から母船を見ると、まるで別世界。みなが働いている姿を遠目に見るって、なかなかいいものだ。 網が徐々に絞られていくにつれ、胸が騒ぎ出す。最初に何やら光るものが1本見えたかと思うと、あっという間に海は光る物体だらけとなり、それがタチウオだとわかった瞬間には、轟音とともにクレーンの先に取り付けられた大きな玉網が魚をすくい捕るのだった2時間ほどで漁港へ戻ると、休む間もなく仕分け作業が始まる。捕れた魚はタチウオばかりではなかった、雑多な魚は打ち捨てられて見向きもされない。関東では高級魚のイトヒキアジなどは、拾って帰りたいほどだ。 行商の魚屋さんがリヤカーを引いてきたり、改造原付で駆けつけたり。魚を買い付けて、これから街の得意先を回るのだろう。 私はおみやげに爪がとれたワタリガニとマサバを1本いただいて、その晩の宿で味噌汁と味噌煮にして食べた。傷物とはいえ5〜6匹のワタリガニからは、濃厚な出汁が出る。息もつかずに汁を吸った後は、むしゃむしゃばりばりと脚に食らいつく。捕れたばかりのワタリガニは、旨い! そして、我ながらよくできた「サバの味噌煮」。味噌のほとんどをカニ汁に使ってしまい、味付けは主には酒と味醂と醤油である。関西で食べる関東煮も、なかなかであった。 高松道に白鳥大内ICから乗り、すぐ次の引田ICで降りる。東かがわ市引田町内の安戸(あど)池は日本の「ハマチ養殖」発祥の地だ。今は「引田ブリ」として売り出し中であり、池のような湾内では『ソルトレイクひけた』が釣り堀も運営している。しばらく見ていると、ルアーで80cmはあろうかというブリを釣り上げていた。 引田漁港は意外や小さな漁港で、漁を終えた船が入ると職員が出て行って計量をする。アカエイなどが揚がっていて、帰りがけにスーパーに立ち寄ればさっそく売られているではないか。http://www.saltlake-hiketa.co.jp/index.shtml
引田漁港のある東かがわ市の東隣りはもう徳島県鳴門市だ。海岸沿いの国道11号線をひたすら走り、そろそろ鳴門海峡ではないかと思い出だした頃、入り組んだ道の先に川とも海ともつかない岸壁に漁船がいくつも舫われているのが見えた。網の修理をしている漁師に聞くと「あの赤い橋(小鳴門新橋)を渡ると、島田島じゃぁ。ここかいな、ここは小鳴門海峡ゆぅてな…」ごうごうと流れる水音と方言で、あとは何を言っているのやら。 漸く、そうか、あの赤い橋を渡ると鳴門海峡か、分かった。ここは鳴門ワカメの栽培が盛んのようで、橋の上から見ると漁師小屋はワカメの種付け小屋だったのだと納得。
小鳴門を越え、大鳴門橋で鳴門海峡を渡ると、兵庫県は淡路島である。ここで急に腹が減っていることに気づき、淡路島南ICで神戸淡路鳴門自動車道を降りて島内を散策することにする。ICから2、3kmの福良(ふくよし)港の中に見つけた暖簾は「こはる食堂」、この暖簾を見て入らないわけにはいかないだろう。 店内は案の定、地元人ばかりでサラリーマンも多く、定食類のほかに小皿までもある。ここでなぜか「かけうどん」と「かけそば」で迷ってしまい、記憶では380円だったと思うが両方を注文したら、これが正解だった。
うどんは当たり前としても、そばは関東ではまず食えない関西出汁の関東そばである。うどんを食ってそばを食って、う〜ん出汁はどっちも一緒だなぁ。でも関西出汁って、薄いように見せて濃厚なんだよなぁ。空きっ腹にどちらもしっかり収まって、1000円でおつりが来たのは言うまでもない。
来た道を戻り、淡路島南ICを通り越した先にあった丸山漁港をのぞくと、お爺ちゃんが漁船から降りてくる。見るからに相当な歳だ。思い切ってたずねたら、何と98歳なんだって! 毎日釣り漁に出ていて、明日のためにこれから仕掛け作りと聞けば、ちょっと仕事小屋へお邪魔したくもなる。「100歳まではがんばるよ」。 お爺ちゃんと握手をすれば節くれ立った手が、なんて暖かい。淡路島で思わぬ元気をいただいて、再び自動車道にのればもう明石海峡だ。道の駅「うずしお」から渦潮を眺めたら、明石海峡大橋を渡って瀬戸内は播磨灘一周の旅を終えるとする。 |
岡山から瀬戸大橋を渡って香川県へ。高松市街では春日町で「讃岐うどん」を食い、左手に見え隠れする瀬戸内海に漁港の匂いを探しながら国道11号を走って着いた先がさぬき市津田町である。















